不動産

【不動産業者にIT化が本当に必要なの?】疑問に思っている皆さんへ

2023.3.6

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【不動産業者にIT化が本当に必要なの?】疑問に思っている皆さんへ

執筆者:奥林洋樹

北海道を拠点として不動産実務を手掛けるほか、ITツールを駆使しながらの不動産コンサルティング業においては全国のクライアントに対応しているほか、不動産関サイトにコラムを寄稿するライターとしても活動しています。
32年間に及ぶ実践経験をもとにしたトラブル解決力に定評があり、そのような経験をもとに行うセミナーや研修会講師を務めるなど幅広い分野で活動しています。

 

今回から「縁」あってDesafiosで不定期にコラムを書かせていただくことになりました奥林と申します。

 

これまでのDesafiosコラムはSEOやセキュリティの基本設計など専門的な内容をお伝えしているものが多いのですが、私はIT業界とはまったく畑違いの不動産コンサルタント、平たく言えば不動産屋です。

 

ですからWEB開発に関しての基本設計や詳細設計などについて語ろうにもまったくの門外漢ですし、書けるのは不動産に関してのトラブル処理や関連法についての解説だけです。

 

それではなぜWEB制作や開発を顧客の要望により制作しているWEBのプロ集団であるDesafiosのコラムを引き受けたのかと言えば、ご縁があったという以外では不動産業とITの親和性が高いに関わらずいまだアナログ思考の同業者さんが多いからです。

 

ITスキルを駆使する若い世代の不動産業者が業績を伸ばしていく一方で、「営業は気合だ~」とばかりに大量に印刷した重厚な物件資料ファイルを抱え走り回っている業者さんも多いのです。

 

これはあまりにも勿体ないことですし、このままIT音痴のままでいれば近い将来、業務が成り立たなくなることをお伝えしたいという思いがあります。

 

そのような意味合いから、主に不動産業者の皆様に向けてIT導入によるメリットについてお伝えしていければと考えています。

 

近年、一気にIT化が進んだトップは不動産業界かも知れない

 

ご存じかと思いますが不動産業者と一言でいっても、実際には様々な専門業種に分類されます。

 

馴染み深いところでは少人数で売買や賃貸不動産を扱う「町の不動産屋さん」ですが、それ以外にも大規模な都市開発を手掛ける大手の不動産デベロッパーのほか、競売や任売を専門にしている業者や不動産買取専門業者、地上げ専門業者など専門性をもって事業を展開している業者さんがいます。

 

私自身、32年間にわたり不動産業者として一通りの業務を手掛けた経験はありますが、あくまでも経験があるとうだけで全てに精通している訳ではありません。

 

これらの業務はそれぞれ必要なスキルや理解していなければならない関連法なども違いますから、全てに精通している人間などまず存在していないとも言えるでしょう。

 

世間一般ではいちばん馴染み深い「町の不動産屋さん」のディリーワークの一例を紹介すれば、出社してレインズを確認し新規登録物件のチェックをします。

 

この時に買依頼の顧客から依頼されている条件に合致するものがあれば、タイミングを見て架電やメールで連絡を取ります。

 

ちなみに「レインズ(REINS)」とはReal Estate Information Network Systemの頭文字を並べて名付けられた名称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことです。

 

不動産業者1社にのみ媒介依頼をする専属専任や専任媒介は、定められた期間内に物件情報をレインズに登録することが義務付けられています。

 

広く情報を共有してより早く売却ができるようにすることが目的とされているのですが、担当顧客から購入の依頼を受けている場合、紹介できる出物物件がないか探すため、毎朝このレインズの新規登録物件を確認するのは不動産業者の基本であると言えるでしょう。

 

気になる物件があれば現地に足を運び確認をします(その時点では建物の中にはいることはできません)そのうえで提案できる物件であれば依頼顧客に連絡し興味がないかを確認します。

 

興味があれば時間を調整して内見(実際に内部を確認する)の段取りをします。

 

その他、住宅ローンの申込みや不動産調査のため法務局や役所まわりをするなどの外業務をこなしつつ、担当物件を告知するため販賣物件エリアの賃貸アパートやマンションなどにポスティングをする業務などをこなします。

 

オフィスでは契約書や各種資料、広告の作成などのほか自社サイトなどへの物件登録、電話営業などの業務をこなしています。

 

このようなディリーワークの流れを書くと、朝のレインズ確認以外にはITが関係ないのではというイメージを持たれるかも知れませんが、そんなことはありません。

 

 

現在では登記情報サービスを利用すれば、法務局に足を運ばなくても登記事項証明や地積測量図、法17条地図などの閲覧は可能です。

 

また登録は必要ですがゼンリンブルーマップもシステムを利用して閲覧することが可能です。

 

路線価やハザードマップ情報もネット検索でき、地域によっては下水道管やガス管の敷設図もインターネットで調査できますから物件調査のおよそ8割ちかくはオフィスなどで行うことが可能です。

 

これらは立派な不動産IT化の恩恵であるといえるでしょう。

 

一定の手順や条件をみたせば重要事項の説明のみならず契約書のやりとりもITで行うことができる時代ですからもはやITの利用なしでは不動産業務もおぼつかない時代であると言えるでしょう。

 

無論、従来のアナログ手法でも業務をおこなうことは可能ですが、購入者や賃貸人が希望するスピード感にはついていけません。

 

小学校、下手をすれば幼稚園の時代からスマートフォンでYouTube動画を閲覧して携帯ゲームに興じ、授業でパソコンを習っている世代が将来の顧客へと成長していくのです。

 

そのように考えれば、望むと望まないにかかわらずITを導入していかなければならない時代であると言えるのです。

 

不動産DXの問題点

 

このようにIT化が進む不動産業界ではありますが、秀逸なシステムが数多く開発され提供されている反面、使いこなせていないという実態が浮き彫りになっています。

 

結局のところ査定システムや顧客管理システムなどにしても、会社に属する社員がその必要性や使用方法について正確に理解し、基本情報の入力などを地道に行わなければ宝の持ち腐れになってしまうからです。

 

これについては各会社がパソコンスキルなどに長けている数名の社員に押しつけるなどした場合、その社員が離職してしまうとシステムを使いこなせる人間がいなくなり結局のところ死蔵してしまう。

 

そのような場合、社長が「まったくウチの社員ときたら、高い費用をかけてシステムを導入したのにまったく利用しようとしない」なんて愚痴をこぼしているのをよく耳にします。

 

その影で社員は「あんな高度なシステムを、販売会社の言いなりになって導入するなら、給料をあげてくれよ……」なんて言っているのですから本末転倒です。

 

そのような状態であるのに気が付かず、利用方法の勉強会などを実施して必要性を説いても、利用しようという社員が増加するはずありません。

 

このような問題が、不動産業界でIT化が浸透しない最大の障壁となっているような気がします。

 

まとめ

 

今回は初回ということで、ITと不動産は親和性が高いのだが結局のところ高度なレベルのシステムを使いこなせないという弊害などにより業者による温度差が著しいという点についてお話させていただきました。

 

筆者はよく同業他社に向けて不動産とITについての話をするときに最新の車や携帯電話などの機能を用いて話をします。

 

ご存じのように最新式の車や携帯電話には「本当に必要なの?」という便利機能が満載です。

 

これはパソコンや家電製品でも同じでしょう。

 

機能が満載であることから説明書を印刷すると膨大なページ数になることもあり、最近では取扱説明書などについてもインターネット上で公開されていることも多いのですが、ともかく様々な機能があります。

 

実際にそれらの機能を全て理解し完全に使いこなせている人などはごく僅かなものでしょう。

 

結局のところ自らの必要性に応じ詳細な利用方法を覚えるのです。

 

筆者がコラムなどを寄稿している関係上、毎日のように利用しているパソコンのショートカットやWindowsキーも、インターネットやワードとエクセルだけを少々利用する程度の方であれば、必要性も感じずあえて覚えようとしません。

 

結局のところ必要な部分だけが盛り込まれ・簡単に覚えられる・自分たちの必要性に応じたシステムであれば、貴重な業務時間を割いて利用方法の勉強会を開催する必要もなく主観的に操作できますし、わざわざ必要性を説かなくても利用します。

 

次回以降はそのような観点から、現在各社で利用されている不動産DXのシステムなどについて解説する記事を寄稿していきたいと思っています。

 

その他IT業界についてのお役立ち情報は、こちらの動画もご覧ください。

http://第30回|もっと早く知りたかった「IT業界」のリアル

http://第31回|IT業界に入って〇〇ができるようになりました!

http://第32回|常に最先端!IT業界の働き方改革!

 

また、LINEオープンチャットで、ITやエンジニアに関わる方向けのコミュニティ「IT人財コミュニティ」も運営しています。

 

ぜひご参加ください。

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