執筆者:奥林洋樹
北海道を拠点として不動産実務を手掛けるほか、ITツールを駆使しながらの不動産コンサルティング業においては全国のクライアントに対応しているほか、不動産関サイトにコラムを寄稿するライターとしても活動しています。
32年間に及ぶ実践経験をもとにしたトラブル解決力に定評があり、そのような経験をもとに行うセミナーや研修会講師を務めるなど幅広い分野で活動しています。
筆者は全国の不動産投資家にたいしてセカンドオピニオンの立場から購入物件の再調査や提案されたレントロールの精査、提示金額の妥当性や地域の特異性から勘案される発展性などについてのコンサルティング業務を行っています。
自身が直接、不動産の媒介を手掛ける場合と違いあくまでアドバイザー役に徹するのですが、この業務はなかなかに需要があります。
投資物件にはそれを媒介している不動産業者が存在しているのですから、本来であればその不動産業者に相談すれば良いのでしょうが、残念ながら全ての業者が誠実ではなく対応やレスポンスに問題がある場合も多く、取り扱い物件が良いので仕方なく話を聞いているという場合も多いからです。
投資物件であればレントロールや販売資料では満室だとされているのに、実際に現地へ出向き外から伺うと空有が目立つのはかわいいもので、中には空家にカーテンを取り付けたまま締め切り、あたかも入居しているように「偽装」している場合もありますから、このレベルになると確信犯です(問いただすと、大概はクロスや畳の日焼けを防止するためだと返答するでしょう)
ネットでも空家偽装の手口を見破るために「ポストの状態」や「電気メーターをチェックする」など、指南サイトが数多くあるところを見ると、そのような業者が多いのだろうと思います。
自身が不動産業者なのですからこんな言い方は本末転倒かも知れませんが、不動産業者は「疑ってかかる」ぐらいでちょうどよいのかも知れません。
そのような理由から、不動産投資を目的として物件を探す場合には、物件情報を提供してくれる不動産業者の存在はかかせないものの、提案された販売資料を素直に信じるのではなく、自らが可能な範囲で調査することが大切だと言えるでしょう。
とはいえ投資だけをビジネスにしているならいざ知らず、副業として投資を行っている場合にはあまり余計な時間を使うことはできず、可能であれば余計な費用も掛けたくありません。
そのような時にこそDXが有効なのです。
DXがデジタルトランスフォーメーションの略であることについては、このブログをご覧頂いている皆様であれば説明不要かと思います。直訳すれば「デジタルによる変容」、つまりはデジタル技術を用いることで生活やビジネスが変容していくという、いわば概念です。
ですから「DX=有償・高額」と言う理解は、たんなる思い込みに過ぎません。
業種や事業形態、目的などで必要とされ求められるDXは変わるのです。
Desafiosが今後、皆様に提案していこうと考えている不動産DXも、不必要で高度なシステムを組み込んだものではなく、各社が必要とし、使いこなせる物だけを集約した「オリジナルの不動産DX」なのです。
例えば不動産投資家がDXの利用を検討した場合、以下のような作業を効率化するシステムが求められるでしょう。
- 物件情報を調査する・内見予約をする
- オンライン内見をする
- IT契約を行う・税務申告を行う
- 入居者や家賃の支払い状況などを一元管理する
もっとも筆者としては遠隔地で移動が困難であるなどの理由が存在しない限り、オンライン内見は推奨していません(雰囲気をつかむことを目的としている場合には良いのですが)
高額な資金を投資する訳ですから、物件状況や近隣嫌悪施設の有無、治安状況などについては自分の目で確認することが大切だからです。
そうは言っても、移動に伴う時間や周辺を調査するために必要な時間の捻出が難しいということもあるでしょう。
そのような時にはあらかじめ物件周辺の基礎調査を行っておき、現地における労力を減らせれば効果的です。
そこで今回は労力と費用を使わず調査・確認ができるサイトのうち、主に「地図」系のものを幾つか紹介します。
Google Maps
知名度も利用者もダントツの地図ですから詳細な説明は不要でしょう。
とくに活用したいのはストリートビューの機能で、検討物件の近隣をくまなく見て回りおおよその雰囲気を見るのに役立ちます。
注意点としては撮影日がいつであるかという点です。
ストリートビューで空き地であった場所が、実際に行ってみたら建物が建築されている、もしくはその逆の場合もありますので注意が必要です。
国土地理院地図
日本唯一の国家地図作成機関である国土地理院が公開しているウエブ地図です。
サイトは下記URLで利用することができます。
https://maps.gsi.go.jp/#5/36.104611/140.084556/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
地図として秀逸なだけではなく作図や計測、断面図など豊富なツールを利用することができるほか、航空写真なども確認することができます。
重ねるハザードマップ
重ねるハザードマップも国土地理院から公開されている地図ですが、こちらは洪水や土砂災害、津波などの防災情報を確認するのに利用できます。
サイトは下記URLで利用することができます。
https://disaportal.gsi.go.jp/maps/?ll=34.539033,135.540175&z=15&base=pale&vs=c1j0l0u0t0h0z0
火災保険などに加入するとしても、災害があった際に多大な影響があるエリアに好き好んで投資する必要はありません。
あらかじめ河川氾濫の危険性などについて確認することは大切です。
防災情報マルチモニタ
地図ではありませんが、国土交通省が気象・水害・土砂災害に備えるため公開しているサイトで、日本全国のハザード情報をリアルタイムに発信しているサイトです。
サイトは下記URLで利用することができます。
https://www.river.go.jp/portal/?region=80&contents=multi
公開情報はレーダー雨量のほか気象に関しての警戒警報、川の水位などですが面白いものに河川カメラの画像があります。
国土交通省は全国に約14,000台の道路河川用CCTVカメラを設置していますが、そのうち約1,600箇所の氾濫などにより近隣への影響が著しい河川水位状況の画像を確認することができます。
投資物件の近くにハザード指定されている河川などがある場合、降水時の状況を確認して判断基準にするなどの利用方法が考えられます。
路線価図と基準地価
不動産価格が、よく「一物四価格」と表現されるのはご存じですか?
販売価格(実勢価格)のほか「固定資産税評価額」、「相続税評価額」、「公示価格」の三つが存在(合計四価)しているからです。
まず公示価格ですが、これは公共事業用地の取得価格の算定基準とされ、不動産業者が査定をする際にも「価格算定の指標とするように」とされている価格です。
この価格は国土交通省から公開されており、更新頻度は年1回、下記URLの「土地総合情報システム」から利用することができます。
https://www.land.mlit.go.jp/webland/
ただし公示価格は基準値の価格が分かるだけですので、多少心細いところがあります。
そこで「路線価」も併せて確認します。
路線価は相続税や贈与額を計算する際の根拠とされる金額で、国税庁が公示価格を参考としながらも独自に定めています。
正式には「相続税路線価」と呼ぶのですが、通常は公示価格の約8割が目安となっていますが、路線価を割り返して計算することで適正価格(公示価格)の目安を知ることができます。
路線価図へは下記URLから利用可能です。
https://www.rosenka.nta.go.jp/
公示価格と路線価を併用することにより、投資物件の適正価格に目安がある程度ですが判断できます。
まとめ
今回は無償で調査に使える「地図」アプリを中心として紹介しましたが、私も含め不動産業者は査定依頼などで訪問をする前に、紹介したサイトを利用して基礎調査を行い、「おおむねこのぐらいが相場だろう」というアタリをつけてから訪問します(中にはまったく基礎調査を行わず訪問してくる業者もいるようですが)
最近、不動産業者の間で採用率が高い「査定書作成システム」なども、基本的には今回、紹介した無償サイトデータのデータを流用していることがほとんどです(サイトをいったりきたりせず、オールインワンで査定書まで作成できますので便利なのですが)
大切な資金を投じて購入する不動産ではありますが、調査に時間や費用をかけたくない投資家の方は、今回、紹介したサイトを利用されてはいかがでしょうか?
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